俺ガイル 解説

注 ネタバレ満載です。俺ガイル、10巻をこえたのでそろそろまとめてみようかなと思ってつくりました。

比企谷八幡から見た雪ノ下雪乃 第3巻

2巻の終わりに、由比ヶ浜の優しさを拒絶した八幡。
由比ヶ浜が部活に顔を出さなくなった状態のとき。

「俺と雪ノ下は距離感の取り方がたぶん似ている。
 世間話や一つの題材についてであれば話したりするが、
 個人のプライベートに触れることはかなり稀だ。」

「立ち入ったことを聞かず、決して踏み込まず、
 これはこれで剣の達人同士の間合いの測り合いのようだった。」

八幡は人間関係の距離感が雪ノ下と似ていると感じていて、
一方で由比ヶ浜のことは似てないゆえに理解できずにあきらめている。

 

由比ヶ浜を部活に引き戻すよう、暗に平塚先生に指導されたあとの雪ノ下のセイフと
八幡の感想。
「『・・・・・・つい最近気付いたのだけれど、
  私はこの二か月間をそれなりに気に入ってるのよ』」
 『・・・・・・・・・・・・』
 俺はぽけーっと口を開けていたに違いない。
 雪ノ下がこんなことを口にするなんて・・・・・・。」

人間に辛辣なコメントしかしてこなかった雪ノ下だからこそ、
雪の下が好きな人間関係を聞けたことにびっくりしたんだと思います。


東京わんにゃんショーの会場に八幡と小町がいった際、
偶然雪ノ下と遭遇したときの会話の切り上げかた。
「雪ノ下と言い争って得られるのは傷とかやけどとかだけなので
 さくっと切り上げて先を目指すことにした。」
言い返しても開き直ったり、傷を認めたりするようになってますね。

 

東京わんにゃんショーに八幡と雪ノ下が二人でいるところに
ばったり会った由比ヶ浜に、二人が付き合ってるんだと誤解され、
あまり話を聞きたくないと言われたあと。

「アレな性格の上、スペックの高さから常に嫉妬の炎に晒され続けてきた
 雪ノ下にとって、由比ヶ浜は初めてできた友達に違いない。
 感謝しているという言葉に嘘はないと思う。
 言葉の端々に諦めが滲んでいながらも、
 その友情を失いたくないと思っているのだろう。」

 

由比ヶ浜の誕生日プレゼントを買いに、
八幡と小町と雪ノ下が一緒にショッピング。
八幡が店員さんから警戒されるため、
離れて雪ノ下にプレゼント選びを任せようとしたとき。
「『私のセンスに任せるつもり?
  自慢ではないけれど、私は一般の女子高生と離れた価値基準を持っているのよ』
 『自覚はあったんだな・・・』
 まぁ、真っ先に工具セットをプレゼントに思いつく女だしな。」

 

雪の下が、恋人のように振る舞うことを許可したときの八幡の反応。
「雪ノ下が俺のクズさに全幅の信頼を寄せているように、
 俺もまたこいつとどうこうならないことに関してだけは絶対の自信を持っている。
 これはこれで信頼と呼べるのかもしれない。」

ただし、雪ノ下の反応は微妙。
「『何か不満でも?』
 『別に不満はねぇよ』
 『そ、そう・・・・・・』」
 雪ノ下が拍子抜けしたように素で驚いた顔を見せる。」
雪ノ下がエプロンを付けて、八幡に感想を求めたとき。
「『どうっていわれてもなあ・・・・・・すげぇよく似合ってるとしか』」
と言った後、
「雪の下はこちらを見ずに、姿見のほうを向いて肩口やヒモ、
 裾を気にしていた。今、雪の下がどんな顔をしているか知っているのは、
 鑑と本人だけだ。」
と、雪の下が意味深に顔を背けているようにも聞こえるような態度を、
八幡は見ています。

 

クレーンゲームのパンダのパンさんのぬいぐるみを手に入れた雪ノ下の態度。
「そんなふうに大事そうに抱きかかえられちまったら返せなんて言えねぇよ。
 可愛いところもあるじゃねぇの。もっと冷血だと思ってたぜ。
 と、俺が微笑み混じりで見ていたのに気づいたんだろう。
 少し照れたように顔を背ける雪ノ下、その頬がわずかに朱に染まっている。」

 

初めての雪ノ下陽乃登場シーン。
雪ノ下が誰かに屈するのを初めて八幡が目撃するシーンでもあります。
「正面を向けず、地面に向かって話すように雪ノ下はしゃべる。
 いつだって真っ向から立ち向かってきた雪ノ下雪乃が。
 誰にも屈せず下を向いたことなどない雪ノ下雪乃が。
 それは俺にとって軽く衝撃を受ける光景だった。
 一人で勝手に落ち込むようなところはある奴だが、
 誰かと相対して膝を追った姿など見たことがない。」

 

陽乃の外面を見抜いた八幡の理由の一つ。
「『それにさ、お前と顔が似てるのに、笑った顔が全然違うだろ』
 俺は本物の笑顔を知っている。
 媚びたり、騙したり、誤魔化したりしない、本物を。」

八幡、よく人を見てますね。
雪ノ下に対する本物も、ここで初めて明示したのだと思います。

 

ショッピングの帰り
「俺から雪ノ下に何かを聞くこともないし、
 雪の下が俺に何かを話す素振りもない。
 たぶん、聞くべきこと話すべきことはあるんだろう。
 だが、お互いに踏み込まない、いつもの俺たちの距離感を選んだ。
 それこそただ電車で隣に座った人同士のような無機質な時間が過ぎる。」

雪ノ下の家庭の事業を八幡は垣間見たけれど、
その家庭の事情を聞かないし、雪の下も話さない、ということでしょう。


由比ヶ浜の誕生日を部室で祝おうという段階、
八幡も由比ヶ浜にプレゼントを用意したことを、
わざわざ雪の下が言明した。
「わざわざあいつが俺に水を向けるということは、
 何かがあったことにはちゃんと気づいていて、
 さっさとそれを解決しろということなんだろう。
 普段まったく優しくないのに変なところでおせっかいだよな、あいつ。」

 

3巻のおわり。
雪ノ下は、気まずい雰囲気の八幡と由比ヶ浜二人を諭します。
一旦関係を終わりにしたとしても、

「『あなたたちは助けた助けられたの違いはあっても等しく被害者なのでしょう?
  なら、すべての原因は加害者に求められるべきじゃない。だったら・・・・・・。』」
「『ちゃんと始めることだってできるわ。・・・・・・あなたたちは』」

といい、うまいこと言いくるめます。
また、加害者を省くことは、事故の件に雪ノ下も絡んでいることを、
話すきっかけのフラグを建てよう、という雪の下の心がけのように感じます。